6月1日のスタッフ全員集合の初顔合わせから
7月1日の診療所オープン
そして半年が過ぎ今年が終わろうとしています。
1番から始まった、診察券のIDが本日診察終了の時点で2914まで来ました。
想像より遥かにたくさんの方にお越しいただき、責任の重さをヒシヒシと感じております。
どこから手をつけて良いかわかりませんが、今年を少しずつ振り返ってみたいと思います。
内容はこんな感じになりました
2020年12月31日
1)診療所に求められているもの
*小児科診療
*訪問診療
*その他全般
2)感染対策
2021年1月1日
3)予防接種
4)高次医療機関との関係
5)スタッフの成長
6)家族の協力
7)地域の皆様へ、そして2021年の抱負
大晦日、元日と2回に分けてお伝えいたします。
1)診療所に求められているもの
*小児科診療
以前にも少しお話ししたかもしれませんが、なんといっても小児科の診療ニーズの高さに驚きが隠せませんでした。
特に早朝、夜間、ご両親のお仕事前後に受診していただく方がとても多く、診療時間を長く設定して本当に良かったと感じました。
風邪や打撲、捻挫、肘内障、とびひ、喘息発作など、もともと想定していたものはもちろんですが、アトピー性皮膚炎、喘息、便秘、アレルギー性鼻炎などの定期診察、定期処方のニーズが多い事は大変驚きました。定期処方については、小児科専門外来ではなく当診療所で対応することが最終的に受診してくださる方の不利益にならないかという点においてとても悩みました。
特に喘息については悪くなった時は入院になることがあるため、定期的に通院が必要なほどの喘息の方は小児科専門の外来で診察を受けた方が良いのではないかと感じていたからです。その点については私の前職場である県立大島病院の小児科の先生方にも何度もご相談をしながら、みんなの診療所としての姿勢を検討してきました。
私のたどり着いた結論は
できる範囲で出来るだけやる
ということです。

そして、判断に悩むときは躊躇なく小児科専門外来に助けを求める事にしました。前述のごとく、当診療所は早朝や夜間で受診される方が多く、他の医療機関には受診することが困難な方がいらっしゃるからです。その方達が行き場を失って、結局状態が悪くなってから受診されるよりは、当診療所でできる限りのことをするべきだと考えたからです。もちろん、いい加減な診療にならないよう、各種ガイドラインや文献などにもできる限り目を通すようにしています。
みんなの診療所は、医療の敷居を下げ日常生活の中に自然と医療が入り込んでいくことを大きな目的の一つに掲げています。その意味では小児診療もできる範囲で皆様のニーズに応えて行くべきだと考えています。まだまだ十分配慮が行き届かない部分もあると思いますが、きちんと一人一人の方と向き合う姿勢だけは忘れずに日々の診療に努めて参りますので、引き続き多くの小児方に受診していただける施設を目指したいと思います。
*訪問診療
訪問診療は当初全くニーズがないと考えていました。そのため、自分のかかりつけになってくれた方がやがて通院が困難になった時、つまり5年後とか10年後になって初めてニーズが出てくると思っていたのですが、この半年ですでに3名の訪問診療を開始し、自宅でのお看取りも経験させていただきました。休憩時間のない診療時間ですので、その合間で訪問診療に出かけるため、さまざまなご不便をかけていると思います。
こちらも正直、一人目の方の依頼を受けるにあたりとても迷いました。一つは訪問診療を自分の得意分野として精力的に行われている先生方が奄美にもいらっしゃるからです。私が毎週訪問診療に出かけていたのはもう15年近く前でしたので、十分配慮が行き届く訪問診療ができる自信はありませんでした。また看護師も外来をするのに最低限必要な人数でスタートしていましたので、訪問診療にいつも看護師が同行できるとも限りませんでした。ですので、依頼をいただいた時にご家族や紹介元病院の方々に『本当に私で良いのですか?』と何度も聞きました。
それでも、できる範囲で良いからお願いしたいということでしたので、文字通りできる範囲で最大限させていただくこととしてお引き受けしました。その後間もなくしてさらに2名の方の訪問診療が始まりました。早朝や夜間に往診の対応もさせて頂きながら、診療所の人とモノのできる範囲で対応させていただいております。

*その他全般
この半年本当に多くの症状の方に対応させていただきました。その一部をご紹介します。
内科:高血圧症、脂質異常症、糖尿病(インスリン治療含む)、虚血性心疾患や脳血管障害安定期のフォロー、喘息、慢性閉塞性肺疾患などの慢性疾患の定期通院。風邪や胃腸炎、痛風、帯状疱疹、虫垂炎、総胆管結石、腸閉塞、虚血性腸炎、冠攣縮性狭心症、一過性脳虚血発作、急性腎不全、蜂窩織炎、腎盂腎炎、前立腺炎、精巣上体炎、膀胱炎、肺炎、副鼻腔炎、中耳炎、扁桃炎など。めまい症。熱中症。蕁麻疹やアナフィラキシー。悪性腫瘍の疑いでご紹介として診断がつい方もおられます。くも膜下出血や髄膜炎の否定のため髄液検査を行なった症例も2例ありました。
外科、整形外科、皮膚科:爪囲炎、アテローム、陥入爪。挫創、切創の縫合。熱傷処置。慢性的な湿疹、アトピー性皮膚炎、伝染性膿痂疹など。肩関節周囲炎や腱板損傷、腰部脊柱管狭窄症や椎間板ヘルニアの方へのブロック注射。肘内障、交通事故後の受診、墜落外傷による多発肋骨骨折、肩関節脱臼、肩鎖関節脱臼、手足の骨折の一時的な固定処置、打撲、捻挫。腰痛。尿膜間遺残を疑う症例などなど。
その他: 溺水、異物誤飲、釣り針の除去、手足異物の除去などの外因性疾患。膣炎、陰部ヘルペスなど婦人科疾患などなど
救急搬入はこの半年で5件でした。
感染症診療は初回治療がうまくいかなかった時に高次医療機関にご迷惑をおかけしないように、採取できる培養検体は出来るだけ採取し、院内でグラム染色を行った上で抗菌薬投与を開始するように心がけています。この半年間で血液培養陽性症例が2症例ありました。
2)感染対策
当診療所では新型コロナウイルスに関する抗原検査やPCR検査は行っておりません。疑わしい症例は感染症指定医療機関である県立大島病院でするのが適切だと思っておりますので、問診や診察上疑わしければ県立大島病院へご紹介する方針としております。
それでも、発熱者の診察においては空間的に分けて診察するべきと考えますので、10月以降37.5度以上の体温の方は車の中で診察させていただいております。また、具合が悪く車内待機が難しい方は個室や処置室での対応とさせていただいております。私以外の職員が関わる時間を極力短くし、感染リスクを伴う接触は基本的に私一人で行うようにしているため、車内診察の方についてはお会計やお薬のお渡しも私がさせていただいております。そのため、発熱者が多い時はやや診療が滞りがちになりますが、安全を第一に配慮した結果ですのでどうかご理解をよろしくお願い申し上げます。

高齢者の受診も多いですので感染対策として、今後も感染症シーズンは車内待機及び車内診察を継続していこうと考えております。
2020年大晦日はこの辺で一旦おしまいとして、続きは元日に持ち越しとしたいと思います。
皆様のおかげで今年一年を無事終えることができます。
地域の皆様、関係各所の皆様、暖かいサポート誠にありがとうございます。
2020年 12月31日 みんなの診療所 所長 原 純