診療所の診療開始準備をしていると、夜が明けて東の空がうっすらと明るくなってくる季節になりました。そんな本格的な春の訪れを感じる朝です。
今日は2020年度最後の日。明日から新年度です。
異動の季節でもあり島のそこかしこで別れを惜しむ場面が見られます。そしてまた新しい出会いの季節でもあります。そんな一つの締めくくりの日に今年度を振り返っておこうと思います。

今年度を一言で表すと
『ありがとう』
この一言に尽きます。
たくさんのありがとうがありすぎてどこから手をつけていいかわかりませんが少しずつ文字に起こしていこうと思います。
1)診療所スタッフへの『ありがとう』
朝6時30分から夜8時まで診療する。土日も祝日も、盆も正月も診療する。大人も小児も全部診る。内科も外科も全部診る。救急車も受ける。こんな私に文句ひとつ言わず、全力でついて来てくれるスタッフには本当に心の底から感謝しています。
ありがとうございます。
診療所待合室が混雑している時も笑顔をたやさず、他の職員の手が空いていなければ本来の自分の業務でなくても助け合ってその隙間を進んで埋めようとしてくれる。
具合の悪そうな方がいれば率先して声をかけて、ベッドで休むように促してくれる。
診療所をいつも隅々まで綺麗にしてくれて、気持ちよく利用できるように努めてくれている。
本当にスタッフに恵まれてみんなの診療所はその個性を発揮できているのだなと感じる毎日です。そして何より、スタッフ一人一人が診療所を大切に思ってくれていて、もっと良い診療所となるように、良い診療ができるように、地域の方々に頼りにしてもらえるようにという思いを持ってくれていることが感じることができて本当に嬉しいです。
このスタッフと共に診療所を運営できること、とても誇りに思っています。これからも地域の皆さんに一番近いところにある診療所としてスタッフ一丸となって取り組んで行けたらと思っています。
スタッフの皆さん、本当にいつもありがとう。そして来年度も一緒に診療所を支えてくれると嬉しいです。
2)御来院くださる皆様への『ありがとう』
普通、開業するときは大きな病院の外来で自分が診ていた患者さんに、今度開業することになったから次からは自分の診療所に通院して来てくださいね。などと、オープンの時にはある程度自分の診療所に通院してくれる患者さんに声をかけてから開業するのが一般的だと思います。しかし、私は直前の勤務が救命救急センターだったこともあり、定期受診して来てくださる方はゼロでした。そのような文字通りゼロからのスタートだったのにも関わらず、突然オープンした診療所に、足を運んでくださる皆様には感謝の気持ちでいっぱいです。
いつも診療所を頼りにして足を運んで下さりありがとうございます。
こんなことで受診して良いのだろうか?
この症状はどこを受診したら良いのかわからない。
病院は行くだけで気が滅入るから行きたくない。
聴診器ひとつ当ててもらえずただ処方箋を出してもらうだけで不安がある
こんな医療機関への不安や不満を一つずつ消し去っていきたい。そして、気軽に足を運べて、快適に時間を過ごしてもらえる診療所を作りたいと思い生まれたみんなの診療所。日常と医療の垣根を無くして医療をもっと身近なものにして、大きな病気になる前にきちんと医療へとつなげたい。そんなみんなの診療所の思いに共感して下さり足を運んで下さる皆様がいらっしゃるからこそ、オープンからの9ヶ月を過ごしてくることができました。

もし受診して下さる方がいなかったらどうしよう。
家族や職員を露頭に迷わす事になってしまう。
オープン当初はそんな不安が頭から離れませんでした。
いや今もその不安がないわけではありません。
しかし、一朝一夕に医療機関が地域に根付くわけがありません。
私にできることは
自分の信じる医療を
自分の描きたい奄美の未来を
実現するために
受診にいらしたお一人お一人に全力で向き合い、それを感じていただく
ただひたすらにそれを続けていくしかありません。
まだまだ至らない点もたくさんあると思います。その1つ1つから目をそらさず真摯に受けとめ改善し、一歩一歩成長を続けて行けたらと思っています。
みんなの診療所は地域の皆様に一番近い診療所として、地域の皆様と共に歩み、成長して行きたいと考えています。これからも多くの声をお聞かせ願えればと思います。
今後も診療所を頼りにしてくださる方の期待に応えるため全力で診療に努めて参ります。
いつも本当にありがとうございます。
3)関係機関、診療所運営をサポートしてださる方々への『ありがとう』
みんなの診療所がまだ私の頭の中にしかなかった頃から一緒に歩んでくれて、私の想いを形にしてくださった松山建築設計室の皆様、施工してくださった政建設や各業者の方々。皆様のおかげで診療所は私の想いを見事に体現してくれる唯一無二の存在となりました。
ありがとうございます。
御来院いただいた方を優しく迎えてくれるこの建築に皆様の暖かさとプロ意識を感じます。
こんな一風変わった診療所へ融資してくださった鹿児島銀行様や医療福祉機構様ありがとうございます。期待を裏切らないような診療でお返しできればと思います。
県のデザイン賞への応募をはじめ日々の診療でも大いにサポートくださっている龍郷町役場の皆様。
ありがとうございます。
決しておとなしくない私ですが、地域の医療をよくしたいという思いからであることを理解してくださりいつも丁寧にご対応いただいております。これからもご相談がたくさんあると思います。引き続きよろしくお願いいたします。
大島郡医師会の皆様。診療時間が長いこともありなかなか会議などには出席できず申し訳ございません。徳洲会、県病院を経て医師会中心の活動となった私です。大島郡医師会の一員としてまずは診療所の安定した運営を確固たるものとすることこそが皆様へご迷惑をおかけしないために必要な第一歩と考えています。今後とも少しでも奄美の医療の発展に貢献できるように全力で努めて参ります。いつも暖かく見守って頂きありがとうございます。
大島消防の皆様。小さな診療所ですが数件の救急搬入を受け入れさせていただいています。また、診療所からの救急搬送時も助けていただいています。先日は偶然救急現場の近くに私がいたこともあり現場で傷病者を診療させていただいたこともあります。いつも救急隊の皆様には感謝気持ちでいっぱいです。
本当にありがとうございます。
島の救急医療の充実のため診療所ならではのフットワークの軽さでできる限り対応したいと思います。今後ともよろしくお願いいたします。

検体検査を外注させていただいている、医師会臨床検査センター様。変な時間の緊急検査の依頼にも快くご対応いただきありがとうございます。
医薬品などでお世話になっているアトル様。開業の前からずっと支えて頂き本当に感謝しています。祝日の急な注文にも迅速に快くご対応いただき本当にありがとうございます。そして、支店長の尾崎さん。尾崎さんがいなければ診療所のオープンには至らなかったと思います。本当に感謝しています。ありがとうございます。
その他、米田クリーニング様、岩崎清掃様、リベラル様、ダスキン様、郵便局やヤマト運輸、佐川急便の皆様、文化清掃社様、吉田商事様など日々診療所と関わってくださっている皆様。皆様のおかげで日々の診療は成り立っています。本当にありがとうございます。
県立大島病院、名瀬徳洲会病院、奄美中央病院、大島郡医師会病院の皆様。皆様の後方支援があるからこそ小さな診療所であるみんなの診療所の診療は成り立っています。診療所では解決できない患者さんがおられた時、いつも迅速にご対応くださりありがとうございます。
また、県立大島病院では二週間に一度ドクターヘリ当番としての勤務を続けさせていただいています。
ドクターヘリ当番としての私を受け入れて頂きありがとうございます。
先日は重症外傷事案への出動もあり、時にこのような経験を続けていなければ臨床医としての感覚を維持できないと感じています。いつまでも緊張感を持って日々の診療に臨みつつ、技術、判断力を維持するためにも可能な限りドクターヘリ搭乗は継続していきたいと考えています。
また、診療所からご紹介した患者さんの回診も県病院勤務の時に同時にさせて頂いています。診療所でとても具合が悪そうだった方も回診にいく頃にはだいぶ容態も回復されており、皆様のサポートに日々感謝するばかりです。今後ともご指導のほどよろしくお願いいたします。
そして、診療の運営をサポートしてくださっている、社会保険労務士の上野さん、税理士の藤川さん。診療所スタッフが安心して働けるのは皆様のサポートあってこそです。
ありがとうございます。
私はその辺りとても不勉強でご迷惑をおかけしていますが今後ともご指導のほどよろしくお願い申し上げます。
電子カルテの導入、運用でいつもサポートしていただいているTSIの皆様。電話かけまくったり、質問しまくったりな私にいつも優しく対応してくださりありがとうございます。痒いところに手が届く柔軟に対応してくださるその姿勢にいつも感心しています。数ある電子カルテの中からみなさんの製品を選択して良かったと感じています。電子カルテの向こうに皆さん一人一人の顔が浮かぶ感じがして、そんな人間臭い感じがみんなの診療所らしいと感じています。今後も無理難題をお願いすることもあるかもしれませんが、どうか根気よくお付き合い願えれば幸いです。
みんなの診療所のコンセプト構築に深く関わっていただいた、永山さんやテンラボの皆さん、奄美未来会議やあまみスイッチの参加者の皆さん、websiteや印刷物を担当してくださっているAMSの皆さん、診療所のイラストを書き上げてくれた才木さん。皆さんのサポートのおかげで、診療所は医療以外の広がりを持つことができています。診療所がイラストだった時から支えて頂き本当にありがとうございます。こうして実際に診療所として走り出すことができました。この繋がりは私の宝物です。
まだまだありがとうを伝えきれていない方もたくさんいらっしゃると思います。本当に多くの方に支えられて診療所が成り立っているのだと、こうしても文字にしてみると改めて感じます。
ありがとうございます。
4)家族への『ありがとう』
私が奄美に住みたいと思ったのも、奄美の役に立ちたいと思ったのも家族あってこそです。
まずは何より妻の香澄との出会いに改めて
ありがとう
香澄がいなければ私が奄美に居ることも、みんなの診療所ができることもなかったでしょう。家族からしたら超無謀とも言える挑戦を人生を賭けて支えてくれている香澄のことは人として心の底から尊敬しています。香澄は私にとって生きている理由の大きな部分を占めています。私の幸せも香澄と一緒だからこそあるものです。
ありがとう。
これからも共に歩んでいきましょう。
そして、長女、楓
もうすぐ中学3年生のお年頃。そんな楓も素直なまま育ち、言いたいこともたくさんあるだろうに静かに淡々と今の原家を受け入れてくれています。部活に勉強に全力で取り組み、弟や妹の面倒をよく見てくれて、香澄の精神的な支えとしてもだいぶ機能しているように思います。いつも笑顔でいてくれる楓にどれだけ救われたことか。原家の長女としてその存在は不可欠です
いつもありがとう。
長男樹。長崎に進学し家にいることは少ないけれど、中学1年生から自宅を出て寮生活をすることは色々な葛藤があることと思います。それでも、その選択をしたからにはそこに伴うハードルは彼自身が越えていかなければなりません。その厳しさを自宅でも伝えていかなければならない一年でした。歯を食いしばって頑張っている樹を見て、自分も後ろ指をさされないようにと背筋が伸びる思いがします。樹の頑張りに負けないように日々の生活をさらに実り多いものにしていきたいと思います。私の今の生活に緊張感があるのは樹に働く父親の姿を見せたいという私のエゴもあります。良い意味で緊張感を与えてくれている樹に
ありがとう。

次男、庵。小学生になった今年度、まだまだ父親が必要な時期に、ほとんど休みなく働いている私。少し後ろめたい気持ちもあるけれど、奄美に必要だと思ったことが目の前にあるのに、庵との時間のためにそれを先延ばしにしたと後に庵が知った時、きっとそんなことを言い訳にするなと言われる気がして、この時期に独立を決断しました。診療所に遊びに来てくれる庵の顔を見るといつも癒されています。今年の夏は少しだけ夏休みを取ると決めました。その時はいっぱい遊ぼうね。小学生としてたくましく育っている庵に。私を慕ってくれるその人懐っこさに
ありがとう。
次女碧。碧が家にいてくれるだけで、家族全員が穏やかな気持ちになれるそんな特別な存在の碧。『明日は土曜日だから碧が起きた時お家にお父さんいるね。やったー』と天真爛漫に喜んでくれる碧。『今日は碧が起きてる間に帰ってくる日だね。帰ってきたら一緒に遊ぼうね』と、少ない碧との時間でめいいっぱい愛情表現をしてくれる碧がそばにいてくれるから、明日も仕事を頑張ろうと思えます。碧の存在そのものが癒しです。
いつもありがとう。
そして、香澄のサポートをしてくれている実家のお母さん、妹さん、東京からきてくれる私の母。身内の助けもなくてならないらに大切なサポートです。いつも原家をサポートしてくれてありがとうございます。
家族一人一人に支えられながら、私の存在があります。家族あってこその私、そしてみんなの診療所です。本当に本当にありがとう。これからも家族全員がいつも笑顔で過ごせるよう、みんなの診療所と家庭のバランスを保ちながら日々の生活を送っていきたいと思います。
5)さいごに
こうして文字にしてみると本当に本当に多くの人に支えられて、私があり、みんなの診療所があるのだと実感します。
明日から新年度。明日からも変わることなく、私や診療所に関わるすべての人に感謝の気持ちを持って日々を過ごしたいと思います。皆様、改めましていつも
ありがとうございます。
そしてこれからも私を、診療所をよろしくお願いいたします。
2021年3月31日 みんなの診療所 所長 原 純