今年は計3回の休診をいただいて、新しい奄美市最上位計画策定のための分科会に参加させていただきました。休診をいただき、診療所をご利用の皆様にはご不便をおかけして参加した会議ですので、私がどんな意見をしてきたのかという点について少しお話ししたいと思います。
私はしまの『次世代づくり』検討分科会という分科会に所属しています。
これは奄美で子を産み育てるために必要なことは何か?という観点に立って、今後の奄美の市政を考えるための分科会です。
様々な意見が出る中、私が医療職である立場から訴えたことはただ一点です。
『奄美市に医療行政を扱う部署及び担当者が必要である』
これを一貫して主張してきました。
子を産み育てるという意味では産科、小児科医療の充実という観点で語ることになります。
しかし、現在奄美市として、これを市の課題として捉えることはできません。
なぜなら、奄美市には医療を担当する部門がないからです。
実際、既存の奄美市の総合計画では医療に関する記載はありません。
https://www.city.amami.lg.jp/kikaku/shise/shisaku/kekaku/documents/kouki_02_1_kennkoudetyoujuwo.pdf
現在の状態ですと、医療に関する課題があった時、奄美市としては『県』もしくは『民間』にお願いする。という手段しか持ちません。もちろん、奄美市としてそれで良いと考えているのなら仕方ないのですが、私は奄美市民として仕方ないと思うことはできません。そこで、一奄美市民としてその点に関して最上位計画に何かしら方向性を示してほしいと繰り返し訴えてきました。
さて、奄美市以外の奄美大島の自治体はどうなっているでしょうか?
瀬戸内町には町立である僻地診療所があります。僻地診療所長は役場内にも役職があります。
同様に宇検村には宇検村直営の国保診療所が、大和村には同様の国保診療所が存在し、それぞれの所長は役場内にも役職があります。そのため、それらの自治体に医療に関する課題があれば、診療所長が在籍する部署がそれを受けることになり、町村や診療所で対応すべき事案なのかを検討することができます。対応すべき課題であれば対応し、自治体内での対応が難しい場合はその部門を窓口として他組織と協働することができます。また、対応不要であれば不要であると決断することができます。
比較してみると瀬戸内町の基本計画にはしっかりと医療に関する記載があります。
https://www.town.setouchi.lg.jp/kikaku/documents/04hokenhukusiiryoubunya.pdf
現在、奄美市では医療に関する課題を、受け止める部署はありません。仮に他部署が受け止めたとして、それが対策が必要な課題なのかを判断することはできません。判断するノウハウや権限が奄美市内にないからです。市として医療機関を持つ必要は必ずしもないと私は思っています。ですが、奄美市に『医療政策が無い』のは問題だと思います。もし、奄美市に医療政策が必要ないと思っているのなら、せめて奄美市には医療政策は必要ないので、『県』の政策や『民間』の力に一任すると明示した方が良いと思います。また、そのほかの医療政策を持たないにしても、公設民営の形で存在している笠利診療所と住用診療所の運営方針については少なくとも示して頂きたいと思っています。
ですが、最上位計画は細かい具体的な事案について示すものではないのでは、そういう意味でまず
『奄美市に医療行政を扱う部署及び担当者が必要である』
という主張一点に絞りました。
奄美市が自分たちの手の届く範囲の医療についてどう考えていて、どう動くつもりなのか、新しい最上位計画には何らかの記載がされることを願うばかりです。