2月に一度、原個人の変化して、診療時間短縮の効果をご報告しました。その時のご報告の通り、原個人は少し人間らしい生活が戻ってきました。とはいえ、土日祝日や大型連休や年末年始は診療ですので、家族の理解が得られていることが大前提の働き方です。
さて、それはさておき、今回は診療時間短縮から4ヶ月経過して、診療所としてどのような変化が出てきたかを皆様にお伝えしたいと思います。それには、下のグラフをお示ししてから解説をする方が伝わりやすいのではないかと感じますのでまずはそれをお示しします。

これは2023年3月頃の総業務量を100とした時の各業務における業務量と時期によるその変化を原の感覚としてお示ししたものです。
まずは2023年3月頃のものをお示しします。
この頃は、年末年始の新型コロナの流行などが少し落ち着いてきた頃ですが、すっかり発熱外来が診療所に定着した時期ですので、1日15人程度は発熱者を車内対応することが続いていた時です。この頃の1日受診者数は13.5時間の診療時間内で60人前後でした。感染症の流行期でも時々100名に達する日があり、目が回りそうな盛り上がりだったねと話をしていたのが懐かしいです。
この頃はまだ診療所も3年が経とうとする頃で、診療所がようやく軌道に乗るかどうかというところと、新型コロナがようやく少し厳しい行動制限や療養期間から解放されようかという時期で、目の前の診察、業務の確立で手一杯の時期でした。
そのため、業務の全体の9割は診療によるもので、学校健診や産業医活動、ドクターヘリ当番などの院外活動、職員や若手医師の教育、組織の成熟のためにかける時間はあまり多くはありませんでした。そこにエネルギーを傾ける余力もありませんでした。
この頃の時期が診療所が安全に対応できる業務量の境界線の状態だったと感じています。
そこから半年して2023年10月頃になると、少し様子が変化してきました。大きな変化は3つです。一つは、2023年4月から、若手医師の地域研修を診療所で受けれることにしました。もちろん、診療所をサポートしてくれるのでとても頼もしいのですが、まだまだ学ぶことも多い時期ですので、診療とは別にお互いに議論するための時間が必要です。二つ目は、昨年度奄美市では6つの医院が閉院しました。その中でも耳鼻咽喉科と小児科クリニックの閉院は当診療所に与えるインパクトがとても大きいものでした。その時期を境に診療所への受診者数は明らかに増加しました。三つ目は、それと連動して、小学校や保育園、施設の校医、園医、嘱託医などを担当させて頂くことが増えました。受診者の増加も、院外活動の増加も診療所が少しでも地域のお役に立てることは大変喜ばしいことです。ですが、私の時間的な制約やスタッフの人数などを考えると、すでに診療所全体としてキャパシティーオーバーの状態でした。
診療時間の短縮を検討し始めたのはこの時期です。11月頃には職員全体で、今後の方針を話し合い、年明け以降は診療時間を短縮することにしました。年末の南海日日新聞には広告も出させていただきました。

その後、11月からはインフルエンザが流行し始め、さらに外来受診者数は増加いたしました。1日に最大133人の患者さんを診察する日があり、2023年12月は一月の平均受診者数が100人を超える状態となりました。また、小児科クリニックの閉院に伴い定期予防接種やインフルエンザ予防接種の予約数も増加していきました。
結果として10月の段階で診療時間の短縮を決定したのは良い判断でした。平日の診療時間は13.5時間から105時間へと短縮し、スタッフを同一時間帯に集中させることができるようになり、外来業務については何かと維持できる状況となりました。
そして、徐々に感染症シーズンが落ち着いてきた2024年4月の状況を見ると、昨年同月と比較して受診者数はやや増加しているという状況です。徐々に1日の受診者数が増加し始めた昨年9月や10月よりはやや少ない受診者数です。平日の診療時間は22%短縮しましたが、受診者数は概ね変化がありませんでした。スタッフを集約化したため、外来業務のみを見ると、安定した状態だと感じています。
しかし、今年からは町内小学校の耳鼻咽喉科健診も診療所で行うことになりました。また、昨年の連続した地域医療機関の閉院を目の当たりにして、医療の継続性、診療所の継承という点において改めて危機感を感じましたため、昨年度取得しました地域総合診療専門医/指導医という資格を足がかりに地域医療を盛り上げてくれる若手医師のための専門医プログラムを作成しようと思案しているところです。そのためには資格維持のために学会参加や自己学習の時間が必要です。また、来年度からはさらに新たな医療機関からも地域研修医師の受け入れ要請を頂いております。そして、診療所もこの7月で5年目に突入します。医師のみでなく、看護師、事務職も若手教育、次の世代へのバトンタッチを意識していかなければならない時期に突入しています。その点において、2023年10月の段階と比較して自己学習や教育/人材育成という点においてよりエネルギーを注いで行くべき状態となりました。また、短縮した診療時間に対して受診者数は変化がありませんでしたので、診察の合間でスタッフ間でカンファレンスをする時間などを捻出することはできませんでした。これから、時間の経過とともに奄美の実情にあった、そして今の診療所の受診者の状況やスタッフの家庭の状況なども鑑み、常に今あるべき診療所の姿を模索していかなければならないのですが、組織運営についてスタッフ間で十分議論する時間が持てていないことは大きな懸念材料です。
これらを総合的に考えて、今置かれている診療所の状態としては、安定的に診療を継続していくためにはまだまだキャパシティーオーバーの状態が継続していると、原は考えています。
どのような対策が最も効果的で、かつ、受診にいらっしゃる皆様にとって不利益が小さいかということを考えつつ、何よりも我々スタッフが疲弊してしまわないようにしなければなりません。この4ヶ月を振り返り今、原はそんなことを考えています。これは、私一人ではなく、診療所全体で考えていかなければならないことです。場合によっては地域全体で考えていかなければならないことであると感じています。診療所としても次の一手を打たなければならない状況だと感じています。