7月1日の今日は診療所6歳の誕生日です。
この1年間の大きな変化を一言で表すと『診療所自体が意思を持ち始めた』と言う感覚です。
これまでの5年間も、時の流れとともに変化する奄美の医療を取り巻く環境の中で、診療所にとって何が最適か、地域にとっては?スタッフにとっては?そして私や家族にとって最適な選択とは?と考えながら進んできたつもりです。当然、この1年も同様の思いで、感性を大切にしながら取捨選択をして過ごしてきました。
その選択の背景にスタッフの個性、診療所の診療能力とのバランス、選択すべき優先順位などを考慮しながら選択し、みんなの診療所らしさとは何かを問い続けて来ました。
それが少しずつ実を結んできたと言うことなのかもしれません。『原』と『みんなの診療所』が徐々に独立した関係性になっているように感じるようになって来たのです。自分なりにその要因を考えながら、実際に診療所に何が起こっているのかも改めてお示ししながら、7年目の診療所がどこへ向かって行こうとしているのかも表現できればと思います。
1)スタッフの充実と自律
昨年は無事に育休から職員が復帰し、新たに事務主任、助産師、新たなクラークを迎えた上、小徳が仲間に加わってくれました。事務職員の中でできることが増え、看護師で出来ることが増え、医師として対応可能な場面が増えました。結果として、診療所として出来ることが増え、その分、原とは異なる発想に触れる機会も増えました。その中で、各スタッフが、どうしたら『奄美をもっともっと元気に』することができるのかを考えながら各々の描くみんなの診療所の在り方を表現してくれるようになりました。
もちろん、診療所長としての最終的な意思決定を行う場面やそれに伴う責任を担うと言う意味では何も変わりませんが、私の感覚としてはリードすると言うよりはコーディネートするいう感覚が強くなってきているのを感じます。
診療所は診療所自体が一つの意思を持ち、考え、動くことができるようになりつつあり、原は目的地だけを示し、あとは大きく道を外さないようにするためのガイドをするような役割に変化しつつある。と言うのが今の感覚です。これは間違いなく、診療所が組織として成長してきている証ではないかと感じています。
そして、スタッフ一人一人の成長と理念の共有の成果だと感じています。
このプロ意識の高いスタッフに囲まれながら日々を過ごすことができる環境に心から感謝しています。スタッフのみんな本当にありがとう。
2)発信とその反応がもたらす変化
奄美は非常に小さく密なコミュニティーです。そんな中で、医療をもっと身近に感じて欲しいと考え今まで活動しています。そのためSNSやブログでの原や小徳の発信なども含めて、受診をしなくても診療所を感じてもらう機会が増えることを大切にしています。小徳の外向きの発信力、行動力によるところも大きいと思いますが、発信し続けることによる反応も少しずつ積み上がってきました。見学の学生や医師も増えました。今までの人のつながりを伝って大保先生も3ヶ月の研修に来てくれました。学校での性教育ももっと公的な枠組みの中での挑戦が始まりました。NHKの放送を見て初めて診療所に足を運んでくださる方も増えました。それきっかけに新たに生まれた人との繋がりもありました。自分たちの意図しない診療所のニーズを、地域の人たちや島外の人たちから気付かされ、それに応えるうちに診療所自体が変化、成長していく様子をこの1年間、目の当たりにしてきました。診療所の仲間たちのみでなく、地域の方や島外から診療所を見てくれている人たちからも刺激を受け、診療所が成長していく様子はまるで、子供が家庭の外に出て学校や職場などの社会に出ることで成長していくのと同じような変化なのかなと感じています。

3)2026年:羅針盤明示から半年の進捗状況
元日、今年の進むべき道を示しました。その進捗状況を見ていきたいと思います。
*診療報酬改定について
6月の診療報酬改定に向けて事務スタッフは本当に丁寧に準備を進めてくれました。診療所がより地域への貢献を高めていくためには診療所の運営自体が安定していることは必須条件です。その面で事務スタッフは診療所の根幹を支える基礎として欠かせない存在であり、それ無くして診療所の存続はあり得ません。
*研修や見学の受け入れ拡大
これは前述し通り年々、拡大傾向です。今年から鹿児島大学の医学部及び看護学部の学生の受け入れも始めさせていただき、海老名からは大保先生が来てくれました。それ以外の医学生の実習や見学も増えました。昨年からは研修者向けの住宅を診療所で確保することとし、今年はついに診療所で社用車も一台準備するに至りました。若手医師や学生の地域研修/実習が、時の経過とともに診療所の日常となりつつあるのだと実感できる変化です。
*婦人科標榜開始
4月に婦人科標榜を開始し、明らかに婦人科診察を求めて受診される方は増えました。小徳がいる診療所の姿が定着してきた証だと感じています。婦人科特定疾患治療管理料のさんていに向けても準備を進めているところです。
*みんなの保健室始動
小徳が診療所に来てくれる前からライフワークにしていた、くらしの保健室。それを診療所の活動の一部とするため、2月から『みんなの保健室』を開始しました。診療時間内の開催のため、通常診療を支えてくれるスタッフにも感謝です。また、運営サポートとして、クラーク1名と看護師1名に加わってもらいました。日常診療とは異なる役割を感じていただき、診療所が街と繋がるその接点を演出してくれたらと期待しています。そこに診療所らしさとやりがいを感じてくれるようになったら嬉しいです。感染症シーズンを除き、2ヶ月に1回程度の開催ができればと考えています。まずは無理せずに継続できることを第一にこれからも継続していきたいと思います。
*奄美群島包括的性教育プロジェクトへの参加
昨年、大島教育事務所の皆様や市町村教育委員会の皆様、小中学校の皆様のご協力のもと、奄美群島包括的性教育プロジェクトが動き出しました。今年はその初年度として、当院からは小徳と看護師2名が講師として参加させて頂きます。仕組みのデザインや組織を超える繋がりを持てるようにするところに原も少し協力させて頂きましたが、今年度は仕組みは大島教育事務所さんが、実際の講師の運営は性教育講師バンクが行なってくれているため、原の手はほとんど離れた形になりました。ですが、この活動に診療所としては可能な限り協力していきたいと思います。それは『教育が島の未来をつくる』と言う信念を共有しているからです。
*デイサービス型産後ケア
現在、龍郷町役場と最終調整に入っています。実際に開始する際は役場を通じてご案内することになると思います。この活動も診療所の新しい個性となれるようにまずは継続していけることを第一に無理なく開始していければと考えています。
<まとめ>
6年目の診療所は5年間の診療所への蓄積を糧に更なる積み上げを行った1年であると同時に、新しい仲間も増え診療所の総力自体も増した1年した。そのどちらもがうまく作用することにより診療所がより自律しました。そのことにより原が前面に押しでた診療所の姿でなく、『みんなの診療所』としてより成熟した新たな『人格』を持つようになりつつあると感じるようになりました。これは子供が親の手を離れ徐々に自らのアイデンティティーを形成していくような過程に似ているような気がしています。この診療所の成長を生みの親として楽しむことができるように、7年目の診療所は年始に掲げた目標を確実に実行し、継続していける形を模索していきます。それにより診療所の一人一人の個性がより際立ち、より成熟した診療所個性として定着していけるように、みんなのサポートをしていければと考えています。
個性を大切に、でも診療所としての大切な部分は失わないように、これからも診療所の成長を促していければと思います。
地域の皆様の理解、協力あってこそのみんなの診療所です。
これからもどうかよろしくお願いいたします。






