診療所をご利用の皆様。みんなの診療所は2024年7月1日で開所4年を迎え、5年目に突入しました。いつもはそのタイミングで1年間を振り返り、今後に向けての想いを皆様にお伝えしてきたのですが、今回はそのタイミングが今となりました。その間、5年目のみんなの診療所はどうあるべきかをずっと思い悩んでいました。日々、目まぐるしく変化する奄美の医療を取り巻く環境の中で、どのように動くのが診療所にとって、地域の皆様にとって、診療所のスタッフにとって、そして私や家族にとって最も良い選択なのか。頭を整理してから文字にしたかったため、少し時期が遅れてしまいました。
まずは、3年目の節目のブログを振り返ります。
ここではすでに1日120以上の受診状況の中、皆様に十分な医療がお届けできていない現状について、申し訳なさと、有限である医療資源の限界については私は悩んでいると書いています。この状況は今現在も変わりはありません。昨年末には職員とも協議を重ねた結果、2024年1月からは診療時間を短縮することを決めました。その時のご案内のブログも改めてお示しします。
ここでは、3つの主な理由を挙げて、診療時間の短縮を決断した経緯について私の考えを述べさせていただきました。
その3点ごとのテーマに分けて、診療時間短縮後どのような変化が起こったかを中心に、このブログは進めていきたいと思います。
1)受診者の増加
とても光栄なことに診療所にお越しいただく方は年々増加傾向にあり、昨年は特に、小児科、耳鼻咽喉科医院の閉院に伴い、受診者が増加しました。診療所としても出来るだけ診療ニーズに応えたいと思う反面、人的、物的資源の限界もあり歯痒い想いを今もしています。
その中で、マンパワーを集中し受診者の増加に対応するため、1月9日から診療時間を短縮いたしました。早朝や夕方以降の時間でなければ受診が難しい皆様には大変ご不便をおかけする形となりましたが、1日130人を超える受診者に対応するためにはこのように対応するしかなかったと今、振り返っても感じています。その後の受診者数の変化を以下にお示しします。

診療時間を1日3時間短縮したものの、保険診療受診者数はやや増加傾向にあります。また、予防接種や健康診断など保険診療以外での受診者も増加傾向にあり、以前の診療時間のまま診療を維持していたら、私を含めスタッフは皆疲弊してしまっていたと感じています。
それでも、小児科領域の喀痰や鼻汁の吸引処置、耳鼻咽喉科領域の鼻ネブライザーなどの処置のニーズがあることを知りながら、今の診療のキャパシティーでは対応できないと考え、今は受診者のニーズにお応えできない状況が続いています。受診者の増加という課題については、後日また別のブログでもお伝えしていきたいと思っていますが、時間の経過に伴う変化に常に対応をしていいかなければならないと改めて感じています。
2)研修医や専攻医、若手スタッフの教育にも力を入れていく
最近の奄美では医療機関の閉院が続いており、医師の確保が課題となっています。また、進学や就職のため島を離れる若者も多く、島で働くことのやりがいを実感してもらいたいとも感じています。そのため、みんなの診療所では、若手医師や職員の教育にも診療同様力を入れていくことにしました。
2023年度、2024年度の2年間で、この先に受け入れる予定の研修医も含めて10名の地域研修医師を受け入れ、2025年度は専攻医1名を1年間受け入れる予定です。また、地元高校卒業の若手職員をこの春から採用しました。
今後、若手医師の教育に携わり続けるために昨年2つの資格を取りました。
*日本プライマリケア連合学会認定医/指導医
*日本地域医療学会地域総合診療専門医/指導医
の2つです。これらは、取得して終わりではなく、5年ごとに資格を更新するために継続的な学会参加や実績報告が必要です。
今後は診療と並行してこれらの資格維持のための学術活動にも参加していきます。奄美の医療を全国に発信することで奄美の医療を少しでも盛り上げることができたらと思っています。
3)院外での活動も大切にしたい
これには大きく分けて2つの活動があります
*学校医、園医、施設嘱託医、産業医としての活動
*自己研鑽のための活動
の2つです。
前者は現在、保育園4ヶ所、小学校2ヶ所、施設嘱託医1ヶ所、産業医1ヶ所の計8ヶ所の担当をさせていただいております。昨年秋から担当施設を追加させていただいたため、春の学校健診シーズンなどがどのようになるかは2024年になるまで想像がつきませんでした。また、2024年度からは小学校の耳鼻咽喉科健診も同時に担当させていただくことになりました。5月、6月は学校検診のシーズンのため休診日の木曜日を利用して学校健診などに伺わせていただきました。この時期、私は48日連続勤務となり、流石に心身ともに厳しい状況だなと感じることがありました。しかし、普段の診療所とは異なるこのような学校健診や校医、園医などの役割もとてもやりがいのある役目ですので、継続していくつもりでおります。
また、自己研鑽として、月に1回程度県立大島病院救命救急センターでドクターヘリ当番を担当させていただいております。スキルの維持はもちろん、地域の中核病院である県立大島病院のスタッフの皆様と近況報告、情報共有ができる時間はとても有意義だと感じています。また、上記の二つの専門医や認定医、指導医の資格維持と並行して、フライトドクターとしての指導者、災害医療チーム隊員の資格については継続して維持していきたいと考えており、定期的な学会参加や講習会への出席は続けていかなればなりません。また、産業医の資格も5年ごとに更新が必要なため、継続的な講習の受講が必要です。
これら5つの資格
*日本プライマリケア連合学会認定医/指導医
*日本地域医療学会地域総合診療専門医/指導医
*日本航空医療学会認定指導者
*日本DMAT隊員、統括DMAT
*日本医師会認定産業医
の維持のための出張や休診は今後も必要と考えております。
これ以上の資格の維持は困難だと考えていること。今は救急医療の分野を中心に仕事をしていないことを理由に、今の認定期間がすぎたら、救急科専門医の資格は更新せず失効する予定です。しかし、すでに、県立大島病院にはいまだかつてないほどの救急科専門医が在籍しており、指導体制が確立しています。原の救急科専門医としての役割は終えたと十分言えるだけ、奄美の救急医療、救急医の体制は充実したと思います。私が奄美に戻ってきた2013年を考えると見違えるようだと嬉しく思います。
これらを総合し、過去にお示しした診療所の業務量のグラフで今現在を表現すると以下のようになります。
院外活動が増加した部分は耳鼻咽喉科検診が追加になった分を追加しております。また、思いの外の連勤になったことも加味しています。この状況を見るとまだ冬の感染症流行期への余力を少し持たせるという意味でも、診療の占める割合を少し縮小せざるを得ない状況であると考えています。どのようにして、地域の皆様にご不便をかけることなく、それを実現していくか。その方針、対応については後日改めてお伝えしていきたいと考えております。
限りある、人的、物的医療資源の中で、みんなの診療所がどのようにあるべきか、常に変化する状況の中で日々悩みながら、この5年目の診療所の1年が始まっています。
