いつも地域の皆様に支えて頂きありがとうございます。みんなの診療所 所長 原です。
この度、松山建築設計室が応募してくださり見事
グッドデザイン賞2021
を受賞することができましたためこの場でご報告させて頂きます。
今年初めのかごしま・人・まち・デザイン賞の受賞に続きとても嬉しく思います。みんなの診療所の実現にあたり動き出したとき私は建築チームにスライド21枚に及ぶ診療所コンセプト、13枚に及ぶ建築コンセプトについてプレゼンテーションしました。そして、みんなの診療所が必要だと思った理由、その想いを実現するために建築に必要な要素を事細かにお伝えしました。

医療は来院いただいた方のお話を伺い、診察し、診断し、治療し、その治療結果によって最終的には医療機関としての存在意義を測定されるべきです。それには1mmの余地もないと考えております。ですが、そのためには多くの人や物やサービスがバランスよくリズム良く幾重にも折り重なっていなければなりません。建築については一度作ってしまったら途中で作り替えることはできない部分も多いですので、いかに最初の段階で具体的に利用者の方や職員の導線が想像できているか?利用者の方や職員の目にどのような風景が写り出されるかを想像できているか?がとても重要でした。

そのため、
座るときは好きな方向を向いて座れるように椅子の配置を考えて欲しい
立った時はここまで見えて欲しいけど座った時は見えないようにしてほしい
待合室からは緑が見えるようにして欲しい
雨の日も濡れずに診療所に入れるように入り口には大きな屋根をもうけて欲しい
ドアを開いてもこの範囲は見えないようにして欲しい
診察台に横になった時は白い天井が見えないようにして欲しい
診察室は圧迫感がないように外が見えるようにして欲しい
具合の悪い人はすぐに横になれるように入り口からすぐに処置室に入れる導線にして欲しい
コミュニティーが狭い分、人と出来るだけ会わずに全ての診療を終えたい人もいるので、個室から出ずに殆どの診療ができる個室を設けてほしい
完全に診察の導線から外れたところにも利用者の居場所を作ってほしい
職員にもながめの良い開放感のある休憩室を作りたい
診察する時は適度な距離をとりつつ診察しやすいようにこのような形の診察机にしたい
など今のみんなの診療所の立地や駐車場の広さ。待合室や処置室、診察室のスタイル。利用者の方や職員の導線などは診療所建設予定地が決まる前からほぼ描かれていたものでした。その理想の実現に向けて、それが可能な土地選び、そして資金計画を立て、そこから建築の構想が始まりました。そして、その理想の実現をともに目指してくれる仲間も集まってくれました。それを支えてくれる多くの関係機関、企業の方々のサポートも不可欠です。

ですが、そのような想いを日々の診療の中でご利用の皆様にお伝えするということはとても難しいことだと思っています。医療機能評価などの第三者機関による評価などもあるのでしょうが、実際に受診された方が直感的にそれを実感することは難しいのではないかと思います。その反面、建築はその中に身を置くことで経験としてそれを感じることができます。みんなの診療所は、我々が提供したい理想の医療を思い描き、その実現のために必要な形を追求した結果が建築に色濃く反映されています。普段は目に見えず感じ取りにくい、医療というサービスを皆さんに目に見える形で、体で直感的に経験していただけるという点において、建築はとても素晴らしい表現だと思っています。その建築をこのように評価して頂けることは、診療所の理念や診療スタイルそのものを評価して頂けているものと私は考えております。それほどまでにみんなの診療所の日々の診療はスタッフ一人一人と建築とが一心同体で機能することで成り立っていると感じています。
裏を返せば、その賞に恥じぬよう今後も気を引き締めて日々の診療に当たらなければならいと決意を新たにするきっかけともなりました。今後も皆様のサポートを頂きながら、地域の中で何ができるか走りながら考え、考えながら走りたいと思っております。今後もみんなの診療所をよろしくお願い申し上げます。