診療所をご利用の皆様にご報告です。
10月10日から12日まで休診をいただいて日本地域医療学会発表での学会発表のため新潟まで行って参りました。皆様にもご不便をおかけして参加してきたため、聞いてきたこと、学んだこと刺激を受けたことなど、こちらでご報告させていただければと思います。
<原の発表について>
今回は、奄美に若い力が根付くことが奄美の医療の未来を明るくする。ということを伝えたくて、個人診療所ながら、専門医育成プログラムを持つことを決断した。という内容の演題として発表させていただきました。思ったよりずっと多くの方が真剣にお話を聞いてくださり、とても嬉しく思いました。
その中で、質問を頂いた点は大きく2つでした。
*どんな人に奄美の専攻医プログラムとしてきてほしいか?
*原のような働き方を他の医師にも求めるのか?求めない場合診療所の在り方として再現性はあるのか?
これについてはどちらも、本当に良い質問だったと感じています。
みんなの診療所としてこれからもより良い研修を提供するために、また、望むような人材にきてもらうためにはとても大切なことです。
これらについて、明日からまたじっくり考えて、言語化して次に生かしていかなければならないと感じました。場合によっては今まで研修を受けてくれた先生方に改めてアンケートを行い、フィードバックをいただく必要もあるかもしれないと感じました。
また、原の働き方をそれ以外の医師にも求めるのかという質問に対する答えは明確にNOです。ですが、そのためにはより診療所の運営状況を安定させていかなければなりません。それについては今後の診療所運営を見ながら、どのように再現性を持たせていくかを描いていかなければなりません。このように学会で診療所を俯瞰して質問してくださる視点は本当に貴重だなと思いました。
また、そのほかに私にとって収穫だったなと思うことを順を追ってお話しさせてください。

1)新潟県イノベーター育成臨床研修コース関連の演題に触れる
原は診療所開業前、開業をするか、経営大学院に通うか、とても迷った時期がありました。結果として、大学院に通っている時間はないくらい、奄美の医療には課題が山積である。という判断のもと開業に至りました。新潟県のイノベーター育成臨床研修コースについては、聞いたことがあったので、とても関心がありましたが、実際にその研修を受けておられる方、受けた後のキャリアを過ごした方のお話を実際に聞く機会に触れ、とても刺激を受けました。
どのような、考えのもと、このコース設立に至ったのか、実際に新潟県に再度勉強に来たいと思えるほどのインパクトでした。お声かけさせていただいた千手先生。見ず知らずの私が話しかけたにも関わらず、とても丁寧にご対応頂きありがとうございました。
やはりいつかMBAを取りたいという気持ちがまた少し強くなりました。
ご興味のある方は是非ご覧ください。
https://www.ishinavi-niigata.jp/invniigatar-recruit
2)FLOCAL 日下先生にご挨拶
有り難いことに FLOCALの日下先生(https://flocal.co.jp/)が私の発表を聞いてくださったため、ご挨拶させて頂きました。
地域の医療を良くしようと思う時、政治の道に進む者、経営の道に進む者など様々な選択があります。公的病院の役割や、政治に求められているものがとても大切なものであることは十分承知しており、そこ無くして現場の医療が良くなることはあり得ないと感じています。その中で、私は政策が国→県→市町村→現場と実装されていく中で、現場に着地するところの『地域に最適な形』というのは現場側でフィットさせていくしかない。それは公的医療機関の制度の範囲では難しいこともある。というのが私の最終的な感触で、自分の選択肢として県立病院を離れ、個人診療所を開業するに至りました。
FLOCALのwebsiteを見ると、そんな私が挑戦していることのうち、診療所単独では十分手が行き届かないところをサポートしていただけるサービスのような気がしました。また、設立メンバーを見ると私が抱いているような、地域医療に必要だと思っていることを系統的に学び、実践しておられる方ばかりで、彼らの思いに強く共感しています。
勝手に尊敬の念を抱いていた日下先生と直接お話しさせて頂くことができて、とても光栄でした。ありがとうございました。
3)学生や研修医の発表の力強さ
今回の学会参加、学会発表の大きなテーマの一つは奄美に若い医師を根付かせるためのヒントを得に行くこと。そのため、学生や研修医の発表も積極的に聞いてきました。原は自分が進んで来た道を道なき道だと思っていて、あまり他の人に大きな声では勧められないなとずっと思っていたのですが、若い方達の地域医療に対する情熱や取り組みを知り、もっと今まで自分が通ってきた道に自信を持っても良いのかな?と思えました。そして、それを言語化して、整理していく作業こそが『みんなの診療所式地域医療』を明らかにすることなのかなと思いました。これからはより、そのあたりを具体的にして、外に向けて発信していけたらと考えています。
4)小徳の存在感の大きさを痛感する
学会参加中に3名の方に、『小徳先生のおられる診療所ですよね』と声をかけて頂きました。小徳の情報発信力の凄さに驚くとともに、すでに小徳をとおして診療所を感じてくれる人がこんなにもたくさんいるのだと感動し、また今までとは違う意味で『みんなの診療所』になってきているのかもしれないと感じました。
5)基調講演 自治医科大学 学長 永井 良三 先生
とても多岐にわたる興味深いお話しでしたが、特に印象的だったところだけを列挙します。
*医師は知識や技術はもちろんだが、その根底の思想に基づいて医療を提供する。その意味で全ての医療者は哲学者である。
*欧米と日本の医療の比較
・米国は市場原理により医療を提供
・欧州は公的な資本や施設によって運営される傾向にある
・日本は資本は公的、運用は民の割合が大きい
この状況で現在の医療へのアクセスを保ち続けるには独自の方法論が必要。
*専門医志向が高まると専門医と専門医の間に隙間ができる。そこを埋める必要がある。
*海外では65歳くらいで退職する医師が多いが、日本はそうではない
*日本では40代くらいから、専門医だったが総合医的な働き方を始める医師が多い。60代くらいなると地域医療に従事する方も増えてくる
*AIは間違いを許容しながら成長する。現段階で参考としてAIの情報を用い、最終的には医師個人がそれを見た上で判断を下すために使用することができる程度には発展してきている。
なんといっても
全ての医療者は哲学者である。
専門医志向が高った先の、その隙間を埋める必要がある。
この2点はとても共感しました。全体を通して素晴らしいお話しでした。
以上、取り止めもない感じになってしまいましたが、印象が薄れないうちに文字にしました。






