診療所をご利用の皆様にご報告です。2月25日、26日と休診をいただいて、大阪に行ってまいりました。
今回の目的はりんくう総合医療センターへの訪問です。
2023年度から、りんくう総合医療センターとみんなの診療所は初期臨床研修の連携施設として協力させていただくこととなり、この2年間計4名の医師を地域研修として受け入れさせて頂きました。

そのご縁をくださった同院臨床研修センターの坂下惠治さんへのご挨拶が今回の訪問の主な目的です。
奄美大島のここ数年の医療を取り巻く状況を改めて振り返りますと、年々閉院していく地域の医療機関。産科の休診などなかなか明るい話題が少ない中で、この臨床研修の連携施設としてのお声かけはとても希望が持てるお誘いでした。しかし、地域の中核医医療機関の研修医が奄美大島の小さな診療所でその貴重な1か月を過ごすということの意味はとても大きなものだと感じました。
毎日、どんどん成長していく時期の先生方の24か月という研修期間の1か月をみんなの診療所で過ごしてもらうからには、自分の所属する病院で研修していた場合と比較して少なくとも同等の成長を感じて頂く必要があります。『思い切って奄美に研修に来てよかった』と思ってもらえるような経験を提供できるのかとても不安でした。それでも、『YES』以外の答えはありませんでした。
坂下さんは私の前職、県立大島病院救命救急センター時代に講演の際にお会いしたのがきっかけでした。その1度の対面のことを心に留めていてくださり、すでに前職を退き一開業医として日々の診療をしていた私に声をかけることはとても大きな決断だったのではないかと思います。今回お会いしてお話をする中で、それが9年前だったことがわかりました。研修医の受け入れの相談をいただいたのは2021年ですので、実に5年間もあの時のことを、そして私のことを覚えていてくださり、お声かけくださったことに感激したことを今でも鮮明に覚えています。
おそらく、院内で正式にそれを許可するにあたって、『奄美大島の個人診療所を研修先として大丈夫なのか?』という声は少なからずあったのではないかと推測します。ある一定の不確定要素や不安がありながらも、病院全体としてその決定を許可してくださったりんくう総合医療センターの組織そのものにもとても感謝しています。
私は坂下さんから、人と人との出会いの大切さを痛切に学びました。『一期一会』という言葉の意味を今までの人生で何度か思い知らされる出来事があるのですが、坂下さんとの出会いもまさにその言葉の重みを実感する出来事でした。

お声かけいただいてから約2年の準備期間を経て2023年から毎年2名づつ、計4名の研修医の先生をみんなの診療所で受け入れさせて頂きました。
トップバッターは花岡先生。誰も行ったことがない、遠い小さな島の個人開業医のもとへ研修に飛び込む勇気に私はまず関心していました。沈着、冷静で、なんでも知っている。そんな印象の先生でしたが、診療所のやり方に合わせて診療してれる姿勢にとても好感がもてました。きっと、この後、続く研修医の先生方の印象も自分次第で変わってくるという意識もあったと思います。そんな中で、十分すぎるくらい診療所に新しい風を吹かせてくれました。研修や奄美自体も楽しんでくれたようで私たちが逆に刺激になり、勉強になりました。そして、この研修受け入れをさせていただく決断は間違っていなかったのだと、私を安心させてくれました。
そして、初年度二人目は宮田先生。奄美の夏の太陽がとてもよく似合うような明るく爽やかな好青年でした。わからないことをどんどん吸収していくその姿を見て、私たちのような地域の診療所でも若い先生が学んでいくことはあるのだなと、地域医療の最前線にもまだ教育のニーズはあるのだと感じさせてくれました。
2024年度は2名。一人目は西泰先生。救急医志望のクールな青年でした。自ら決断する力があり、そのスピードも速い。救急医にはとても向いているなと研修中に感じました。そんな彼を待っていたのかと思うほど、この月は急患が多く、1か月で3回も救急車に乗って、高次医療機関への搬送に同乗してもらいました。昨日、病院へ伺った際も当直明けにも関わらず私の到着も待っていてくれて、ずっと一緒に院内を案内してくれました。そんな情に厚い、優しい側面も併せ持った先生です。

二人目は西尾先生。丁寧で柔らかい語り口調が印象的な先生で、隣の診察室から彼女の声が聞こえてくると、『きっとこれなら患者さんも満足して、そして安心して診察を受けて帰ることができるな』といつも思っていました。普段、多くの患者さんの診察が立て込み、十分に皆さんのお話を聞けていない時も多い自分を逆に省みることになりました。奄美も存分に楽しんでくれたみたいで私たちまで楽しくなるような雰囲気をもった先生でした。
みんなそれぞれの個性を持っていながらも、共通していたのは、
1)しっかりと学ぶ姿勢があること
2)地域の実情に合わせた診療ができていること
3)奄美大島自体を存分に楽しんでくれたこと
でした。
1)、2)は、風邪や定期受診などの安定した患者さんが多い診療所の診察の中で、ともすると目的を見失ってしまうこともあるかと思っていましたが、一般的な高血圧、糖尿病や脂質異常症などの標準的な治療や、その標準的なルールがどのようにしてできているのか。一見風邪のように見えるが、その中に紛れている見逃してはいけない疾患などについて、私と議論をしながら、きちんと学んで帰っていきました。
また3)については、家と診療所の往復のみに近い私よりもずっと奄美のことを知っているのではないかと思うほど皆、奄美を満喫してくれました。花岡先生と宮田先生は2024年にもプライベートで奄美大島の訪れてくれて、診療所にも顔を出してくれました。本当に嬉しかったです。
そして、2025年度は3名の研修医の先生がりんくう総合医療センターからみんなの診療所に研修に来てくださいます。その3名の先生方とも昨日お会いしてご挨拶することができました。
また、病院長、救命救急センター長、臨床研修センター長の先生方ともご挨拶をさせていただくことができました。激務の中、私のためにお時間を割いてくださったこと心よりお礼申し上げます。また、みんなの診療所への研修を許可してくださったことについて改めてお礼をお伝えすることができました。皆様、本当に快く私を自室に招き入れてくださり、温かく受け入れてくださいました。この病院の雰囲気が坂下さんの声かけに繋がったのだなと感じるととができました。そして、実際に研修に来てくれた研修医の先生が皆素敵な先生ばかりなのも、組織としての大きな方針が影響しているのだなと感じました。
さらに、臨床研修センターの前田さん、稲垣さんも私の訪問中、ずっと一緒に院内を回ってくださり、各先生方をご紹介頂き、本当にありがとうございました。普段、メールや電話でのやり取りばかりでしたので、直接お会いしてお礼をお伝えすることができて本当に嬉しかったです。
実際に足を運び、いろいろな方にお会いすることで、このご縁の大切さを改めて実感することができました。これからもこのご縁を大切に育てていきたいと思います。地域の皆様も今後とも温かい気持ちで迎え入れてくださると幸いです。今はまだ細い糸ですが、そうした細い糸が何本も合わさって最終的に一つの紬となります。地域医療に差し込んだ一つの明るい光だと私は考えています。地域全体でそれを育てていければと思っています。
そして、改めまして、みんなの診療所へお声かけくださった坂下さん、それを許可してくださった病院管理者の皆様、日々の対応をしてくださっている臨床研修センターの皆様、そして研修に来てくれた先生方、これから来てくださる先生方にお礼を申し上げます。
誠にありがとうございました。今後ともよろしくお願い申し上げます。