大型連休の前半が過ぎ去ろうとしています。これからが連休本番ですが、先週末、29日、30日のみんなの診療所の状況と、5月1日夕方に起こったことをご紹介しつつ、このタイミングを機に今一度奄美の医療資源について皆さんにも感じたり、考えたりしていただきたいと思います。
4月29日昭和の日、30日日曜日の2日間でみんなの診療所では約150名の方の診察を行いました。
特に29日の午前中は3時間の間に50人以上の受付があり、お一人に充てることができる時間は、3分ちょっとという状況でした。29日は県立大島病院の救急外来もとても受診が多かったと伝え聞いています。
そう思うと、少なくともみんなの診療所が休日、土日診療を行なっていることにはニーズがあるし、県病院の救急外来が本来集中すべき重症の方の診療に出来るだけ専念できるようにすることにも多少役になっていると感じることができます。
ですが、みんなの診療所は原一人で診察をしています。そのため、この人数の受診となると、時間のかかる処置や、詳細な問診、診察が必要な方などの対応は非常に困難と言わざるを得ません。受診をお断りせずに一人でも多く診察するという事と、その中でも出来るだけ質の高い診療を行いたい、出来るだけ満足度の高い診療を行いたいと思う気持ちとの間にとても葛藤があります。そして、自分の集中力、判断力の限りで最大限その両立に努めているつもりです。それでも、いつも、もっと、あの方には時間をかけて対応するべきだった。もっと、良い診療ができたのではないかと反省することばかりが続いています。
特に、今回のような大型連休、お盆休み、年末年始は受診される方も多く、小さな診療所の診療能力としては限界に近いか、限界を超えていると思えるような状況もしばしば経験します。
そのため、コロナの波が大きくなって以来、昨年のゴールデンウィーク以降、お盆休みや年末年始は、診療を当番制にするなどについて検討してほしいと各所に打診していましたが、それが実現することはなく、昨年夏は診療が6時間待ちとなるような事態となり、今年のお正月は原がコロナに感染し年末年始診療を途中でお休みすることになりそのほかの医療機関や受診をご希望される方に対してとても申し訳ない気持ちになりました。
年末年始診療にしても、ゴールデンウィーク診療にしても、お盆診療にしても、みんなの診療所が診療を継続するためには一緒にそこを切り抜けてくれえる診療所のスタッフやその家族の協力、そして、何より原の家族にも理解をしてもらって、協力をしてもらって、我慢してもらったその上で、診療は維持されています。そうしてでも、奄美には埋めなければならない医療ニーズが放置されたままになっていると原は考えています。もちろん、今もまだそのニーズに十分応えられているとは思いません。
ですから、本当は個人の努力としてではなく、組織として、私の希望としてはできれば行政が中心となって、医療資源が乏しくなる連休時期やコロナや災害のような突発的に生じるの診療ニーズの増大に応えるための仕組みづくりをしてほしいと思っています。もちろん、ほかの方法で奄美の医療資源を有効活用できる仕組みづくりができればそれでも構わないと思っています。そして、それがほかの誰かの手によってなされないのなら原がやらなければならないとも感じていますが、今、この目の前に押し寄せる患者さんをほかの誰かに任せることができる状況ができなければ仕組みづくりに着手することはできないというのが率直なところです。そのため、原はこの1年の間で少し考えを変え、後進の育成に当たらなければならないという気持ちになりました。実際に、今年から奄美看護福祉専門学校の短期間の実習を受け入れることを開始し、4月からは地域研修医の医師を1~2ヶ月単位で受け入れることにしました。一度、資格を執行してしまった、若手育成のための指導医の資格を再取得することも目指します。
奄美の人口はついに10万人を割り、新規開設する医療機関よりも閉院していく医療機関が圧倒的に多く、10年前後の間には奄美大島の大きな医療機関の病院建て替えが立て続けに必要な時期に入ります。その時に、各医療機関がバラバラに動いていては、今まで以上に需要と供給のバランスは崩れてしまい、最終的に困るのは島に住む皆さん一人一人です。
でも、普段、困ったときだけ受診をして、普段、奄美の医療がどのような状況にあるかを感じることがない地域の皆さんにはその危機感がなかなか伝わらないのは無理もありません。だからこそ私は機会があるごとにこのように、私の感じている危機感を文字して、皆さんに見える形にしているつもりです。あと、10年、20年経ったとき、もう少し早く手を打っておけばよかったと思うことがないように祈るばかりです。
そして、今日、5月1日は17時の診療終了直後に受診にお見えになった方の受付を1名お断りさせて頂きました。お断りした私も大変心が痛かったのですが、診療時間を過ぎてもいつまでも受付を受けれ続けることは継続性という意味で非常に課題があります。診療所が始まって1年目の冬、受付終了の夜8時を過ぎても新しい受付の方が来なくなるまで診療を継続したことがあります。そのとき、最後に受付をした方は夜10時近かったと記憶しています。このような状況が常態化してしまっては職員を守ることもできませんし、何より私の気力体力がいつか底を尽きてしまいます。個人や一つの施設の努力でなんとかすれば良いという考え方自体が間違っていたのだと今は考えています。このように時間外や休日など医療資源が乏しくなる時の対策は地域全体で対策を立てる必要があると感じています。
今日も私が診察に応じることが、私の精神衛生上も、患者さんにとってもその瞬間だけを切り取ると最も良い選択でしたが、私がそれを続けていると、いつまで経っても地域としては、この問題が見えにくくなってしまいます。ですから、本当に心苦しいと思いながら、診療をお断りしました。
このような夕方以降や連休の時の医療体制を今後どのように考えていくのか、医療関係者の方も、行政の方も、受診する側としての島に住むお一人お一人の方も、奄美の医療資源とどのように向き合っていくのか自分のこととして感じていただけたらと思います。
昨今の働き方改革で、県病院をはじめとした中核医療機関の救急外来も人を充てることが難しくなっていくことが予想されますので、県病院に行けば良い、徳洲会に行けば良いとはいかなくなる未来も考えておかなければなりません。そうしたら、各医療機関や組織が力を合わせて切り盛りすることが自然と必要になってくるはずです。
そして、このブログでも度々お伝えしていますが、体調が悪い時に無理して働かずにお休みできる、もしくは家族が体調が悪い時はそのサポートのためにお休みが取れる、そんな社会に奄美がなっていく必要もあるのではないかなと感じています。
それでも、ワーカホリックの原は自分の気力と体力が続く限り、そしてスタッフや家族の理解がえらえる限りできる限り皆さんの医療ニーズに応えていきたいと思っています。そのために、規則正しい生活をし、飲酒もせず、自宅と職場の往復のみという生活を自分に課しています。それでも、まだ供給は足りていないと感じていますが、今の状況が自分が提供できる医療の限界に近いと最近は感じています。
これ以上を目指そうと思えば、仲間を増やし、診療所自体がもっと力をつけていくしかありません。今の医師数、スタッフ数で今以上を目指せば、いずれ燃え尽きてしまうでしょう。そうならないようにまずは継続できる範囲で続けていくしかないと今は考えています。
地域の皆様のすべての医療ニーズにお応えできていない点は本当に申し訳ないと感じています。力不足で大変申し訳なく感じておりますが、どうかご容赦ください。そして、この状況に納得してくださいとは申しませんが、診療所の診療能力にも限界があるということをどうかご理解いただけましたら幸いです。