今回は私が救急外来で抱いた2つ目の疑問
『なぜこの患者さんは救急外来に受診しなければならなかったのだろう?』
という点について書かせていただきます。
私は幸い救急を断らない病院でしか働いた事がないので、夜でも休日でも、軽症から超重症まで、子供から大人まで救急外来で継続して診療してきました。ですので、それが当たり前だと私は思っています。
そんな中に
なぜこの患者さんは日中の外来ではなく、救急外来を受診することになったのだろう?
と疑問を感じる事が度々あるのです。
昼間は様々な診療科が診療していて、夜間の救急外来に来るよりも診療の専門性は圧倒的に高いはずです。もちろん、急に具合が悪くなったのであれば救急外来以外の選択はないのですが、よく話を聞くと数日前から調子が悪かった。場合によっては数週間前から具合が悪かった。などという方もいらっしゃいます。もしくは午前中から具合が悪くても受診が夜になってしまう方もいます。

『救急』と『時間外』は本来は意味するところが異なるはずですが、時間外外来=救急外来と考えられている場面が多いように感じます。
このような患者さんから、救急外来受診になってしまった理由を伺うと以下のようなパターンがありました。
A)誰か連れて行ってくれる人が家に帰ってこないと受診する事ができない。これは小児や高齢の患者さんに多い理由です。
B)通院するために仕事を休みたいとは言えない。それでも休みを主張すべきという意見もあるかとは思いますが、ここには書けないような悲しくなるような言葉を浴びせられたりする事もあるようです。それでは受診したいとなかなか言い出せないこともあるかと思います。特に労災になるかもしれない事案についてはコッソリ仕事が終わった後、受診される方がいます。
C)暗くなると不安になる。昼間は仕事をしていたり、誰かと一緒にいたり、やる事があったりして気が紛れていますが、夕方になり家に帰ってくると急に体調不良を思い出し不安になりいてもたってもいられなくなる。
D)第三者の指示で受診を勧められた。本人や同居家族は翌日以降の日中の外来受診で大丈夫だと思っていたのに、夕方家に来られた親戚や知人、電話で相談した友人に、すぐに病院に行きなさいと言われて受診した。

日が落ちて暗くなると自分の体調不良が一際不安になる方もおられます。
A,Bの患者さんは本来日中に来るべき患者さんだったのですが、なんらかの事情で来る事ができなかった方。明日の日中になるとまた受診できなくなります。C,Dの患者さんは概ね緊急性があることは少ないですが(もちろん大きな疾患が隠れている事もありますが)、周囲の状況として明日まで受診を引き延ばす事ができなかった方です。
このような方達にとっては、選択肢が『救急外来』しかないのです。
ですが、それ以外にも救急外来という場所は、ありとあらゆる患者さんが集まっています。発熱の患者さん、事故の患者さん、抗癌剤治療中の患者さん、妊婦さん、小児、免疫抑制剤を使用している患者さん。そして、救急外来の担当医師は数名、看護師も同様です。歩いて来院する患者さんのかたわら、救急車搬送の患者さんも診察します。
ですから
『いますぐ』診察が必要な患者さん
『いますぐ』でなくても大丈夫だが時間外の受診とならざるを得ない患者さん
の2タイプの患者さんが救急外来には受診しています。後者の患者さんがもし『救急外来』以外の選択肢を選択できたとしたら、時間外でももう少しゆったりとした診察が受けられるのではないかと考えました。
そして、救急外来でなければならない前者の患者さんはより重点的に救急外来で診察を受ける事ができます。どちらの患者さんにとっても良い状況を作る事ができるのではないかと考えました。
もちろん、今の時期は感染症拡大防止の観点から不要不急の医療機関受診は控える方が、患者さん自身の身を守ることに繋がる場面も多いので、安易な受診は控えるべきです。C,Dに該当するような方は自宅で様子をしばらくみて頂いて、症状か改善するのであれば受診は必要ないでしょう。ですが、夕方5時をすぎると救急外来という選択肢しかない。日曜日は救急外来という選択肢しかない。という状況は患者さんにとって良い環境とは言えないのではないかと考えています。